ジョゼ・マヌエル・バローゾ 欧州委員会委員長, ポルトガル元首相
ジョゼ・マヌエル・バローゾ (H.E. José Manuel Barroso) 欧州委員会委員長 (2004-2014), ポルトガル元首相
(2002-2004)
はじめに、UPFにお礼申し上げ、韓鶴子総裁へ感謝申し上げます。韓国という素晴らしい国に親切にご招待してくださり、ありがとうございます。
EU(欧州連合)の役割と平和に対しどのように寄与しているかをお伝えします。私が欧州委員会を代表してノーベル平和賞を受賞した際、こう話しました。非常に有名な哲学者スピノザ(Spinoza)は「平和とは戦争がない状態をいうのではない、平和な状態とは徳のあることであり、心の安定であり、親切な行為であり、信頼と正義があることである」と話しました。
私たちは全世界で平和を追求しようとしています。しかし、世界だけでなく、ヨーロッパでもさまざまな難民問題に直面しています。そして気候変動に直面しており、絶滅の危機に瀕しています。戦争、貿易戦争、そして技術的破壊などが、我々共同の課題であり、不確実性の時代に直面している課題です。
それでは、このような問題をどう解決すべきでしょうか?現在グローバル化の進行によって、数百万人の人々が、飢餓、貧困から脱し、全世界がより改善しているが、国粋主義、保護主義、外国人嫌悪などの問題は、まだ残っており、別の問題を引き起こしています。
今、和たちは共に解決策を見出さなければなりません。27カ国のEU加盟国があります。EUは我々の価値、欧州連合の基本的な価値を非常に重要視しています。つまり、戦争自体を考えさせない平和的な方向に進まなければならないということです。現在は平和のための一つの過程であり、経済的な統合が行われています。また、自由貿易を追求し、人々と資本の自由な交流を追求しています。そして人間の価値を尊重し、民主主義、人権と男性と女性の平等、また、少数人種に対する尊重の価値を持っています。このような価値は、EUのアイデンティティーと言え、共同の価値といえます。
しかし、保護貿易、国粋主義があるのも事実です。もちろん、私たちのアイデンティティも重要です。但し、愛国主義と国粋主義を混同してはなりません。愛国心というのは国粋主義とは全く異なります。国粋主義は憎悪とつながっています。私たちはアイデンティティが必要だが、 自分の国益だけを重視するのではなく、世界全体を一緒に考える必要があります。世界中の問題を解決する上で共通の課題、共通の価値に基づかなければなりません。
世界中の問題を考えてみましょう。気候変動、国際テロ、コロナウイルスのような国際伝染病があります。これが平和と安定を脅かし、自由貿易、経済的な安定性を脅かしています。このような脅威がまさに国際的な問題であり、これは国境を越えています。私たちはこの問題を一緒に解決していかなければなりません。私たちはボートの片方だけが、沈んでいると思ってはいけません。つまり、共同の解決策を探さなければならないのです。
それゆえに、今のEUの価値は全世界の価値と同じです。私たちは権力を共有しようとするのです。そして政治的な側面から見て一つのイデオロギーだけを考えるのではなく、人類を考えるべきだということです。人類、男性、女性、子供全員のことを考慮しなければなりません。政治を一つの手段として考えてはいけません。政治を通して、共同の善を成していかなければなりません。ヨーロッパの過去を見ると戦争や、様々な紛争もありました。そして和解が成立していない場所も存在します。だからこそ、私たちは和解の精神を成していくことが出来る方法について考えていきましょう。
ありがとうございました。