第18回世界言論人会議
2001.1.15~17(東京、都内ホテル)
●日本では2回目の開催となった世界言論人会議(WMC)での開会バンケット
(1月15日東京・新宿、京王プラザホテル)
第18回 世界言論人会議
新千年紀におけるメディア
― その統一的方向性 ー
言論の責任は人間の尊厳性の擁護
60カ国、700人の指導者が参集
世界の言論人が時代的なテーマについて討議する機会を設けることでメディアの発展と平和の実現に貢献してきた世界言論人会議の第18回会議が、1月15日から17日の3日間、東京都内のホテルで開催された。主催したのは、世界言論人協会とワシントン・タイムズ財団など。会議には世界60カ国および国内の言論関係者、政治指導者ら約700人が参加した。IT(情報通信技術)革命がもたらすメディアの世界化時代に、大衆迎合の享楽主義、商業主義に流れることを警告し、道徳や倫理など人間の尊厳性を守ることの重要性を訴えた。
15日夜には開会晩餐会が開かれ、最初にニューズワールド・コミュニケーションズの郭錠煥会長が歓迎の辞を述べ、アレクサンダー・ヘイグ元米国務長官の基調講演があった。続いて、同会議創設者である文鮮明・世界平和連合総裁のメッセージが、米ワシントン・タイムズの朱東文社長によって代読された。
アレクサンダー・ヘイグ 元米国務長官
■冷戦終結に貢献果たす
世界言論人協会は1978年に創設され、日本での開催は84年の第7回会議「メディアの信頼性と社会的責任」に引き続き2回目となる。冷戦時代には、国際会議と「事実調査旅行(ファクト・ファインディング・ツアー)」を通じ、アジア、アフリカ、中南米、そして東ヨーロッパなどをめぐり、共産政権の実情と共産圏の崩壊過程を先駆けて把握し、世界に向けてのメッセージを発してきた。特に1990年にはモスクワで開催し、ペレストロイカを進めるゴルバチョフを激励するなど、冷戦の終焉に果たした役割は大きい。
本会議は翌16日から3つのテーマを中心に実質的会議に入り、16日には「人間生活の質と新しいメディア環境」、「世界共同体の建設とメディアの役割」の前半、続いて17日には「世界共同体の建設とメディアの役割」の後半と「メディアの責任、道徳的原理、および絶対的価値」について討議がなされた。
■家庭と宗教の重要性の見直し
また、16日午前のパネルにおいて、ダン・クエール米国元副大統領がスピーチをおこなった。同氏は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』について触れ、新しい技術が独裁者によって悪用され、国民大衆が支配される危険性を示唆したと述べた。彼の警告は一部正しかったといえるが予期できなかったのは、技術の普及によって人々が即時的に情報を入手できるようになったことだと指摘した。さらに、事実と報道が異なる場合があるが、メディアは質の向上のために、まず真実を追求することに努めなければならないことを強調した。
そして、これまでメディアの自由が尊重されてきたが、これからは責任が問われ、家庭や宗教の重要性を見直す必要があると締めくくった。
また、午後のパネル「メディアと社会構造:家庭崩壊か家庭再建か」において、上智大学の渡部昇一教授が日本の「家庭崩壊」現象についてスピーチをおこない、家庭を否定するルソーの思想が蔓延して、女権拡大による家庭崩壊に進んでいると強調し、根本は思想問題であると警告した。
17日は、「世界共同体の建設とメディアの役割」について、2つのセッションが同時進行する形式で進められた。特に政治的安定とメディアの役割について討議され、劉又根(ユ・ウクン)韓国世界日報副編集長や、米ワシントン・タイムズの安全保障担当記者ビル・ガーツ氏らが、取材現場から見た政府とマスコミのあり方を語った。
ダン・クエール 元米国副大統領
■人間の尊厳性高揚が言論の目的
この会議を通じ、参加者らは常に「メディアの統一的方向性」という文言を意識して討議した。それは、言論に対する規制のイメージを伴っているからである。
特に、最終パネルでは「メディアの責任、道徳的原理および絶対的価値」において論議されたが、それは人間の尊厳性の保護・高揚が神への信仰と安定した家庭基盤を通じてなされるとの意味であることを確認した。
閉会晩餐会では、主催者を代表し、ワシントン・タイムズ紙の朱東文社長が「これまで真実の報道を妨げてきた政治的圧力、テロ、技術的障害が、電子メディアなどの登場により取り除かれつつあり、何が真実であるかを見出しやすくなってきた」と指摘する一方、価値観を保持し、責任ある報道をするメディアが、今後一層必要とされると語った。
ドゥミトゥル・ティヌ
ルーマニア日刊紙「アデバルル」編集長
シュライヤー 元カナダ総督
ジョン・オサリバン UPI編集主幹
ケネス・カウンダ ザンビア元大統領